日本文化


 


 京都はずっと憬れの街だった。小学校の修学旅行の他は、学生時代に卒論の発表会か何かで東山の工芸繊維大学に来た。当時は、まだたくさん残っていた路面電車であちこちを回るのが楽しかった。

 最初の職場は京都(と言っても大山崎町)だったし、それ以来ほとんど高槻近辺に住んでいるので、「憬れの街」には行こうと思えばいつでも行けるはずだが、近いと行かなくなるのも人情らしい。祇園祭りは一回行ってそれっきり(あの人出と暑さにはついていけない)、大文字焼きも見たことがない。

 三年ほど前、アメリカからの留学生を案内して、久しぶりにお寺や神社を回った。「日本の文化に興味がある」という彼女の言葉を信じて連れて行ったのだが、何故か全く興味を示さない。ところが帰りにちょっと寄った新京極のアニメ&フィギュアの店に行くと、彼女の目の色が変わった(もともとブルーだったが)。曰く、「この店に来たのが今までの人生で一番ハッピー」だったそうな。(岩崎恭子か、お前は!というツッコミは彼女には通じなかった)

 何の事はない、彼女にとっての日本文化とは、清水寺や金閣寺などでは毛頭なく、犬夜叉やエヴァンゲリオンだった訳である。

  
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