ちさんの「ち」


 福岡市内に泊まった時、中洲に飲みに行った。宿泊のチサンホテルからは少し遠かったので、行きはタクシーを使った。そこそこ酔っ払ったあと、酔い醒ましにホテルまで歩いて帰ろうと思った。タクシーが通って来たと思われる道をしばらく歩いたが、酔っていることもあってどうも方角がよくわからない。少し高台に上って見たら、はるか彼方にチサンホテルの「ち」の赤いサインが見えた。

 あんなに遠かったかなあ?と不思議に思いながら、そっちの方向にひたすら歩いた。30分は歩いただろうか、ふと目を上げると、その赤い看板が頭上にあった。
その「ち」には、「てんてん」がついていた。つまり、チサンの「ち」ではなく、ヒサヤ大黒堂の「ぢ」だった・・・
見上げたまま、しばらく茫然としていた。
結局そこからタクシーで帰った。行きより余計にかかった。

 ここまで書いて、いったいどれくらいの距離を歩いたのだろうと思って、博多の地図で調べてみた。どうもおかしい。チサンホテルとヒサヤ大黒堂は目と鼻の先、っていうかほとんど向かい合わせ。この位置関係では上のような事は起こりようがない。おまけに「ち」のサインを上げているのはチサンホテルではなく、チサンが経営するマンションらしい。どうも記憶が混乱しているようだ。

 考えてみたら、出張でチサンみたいな高級ホテルに泊まるはずが無い。たぶん、遠くにある「チサンマンション」前のビジネスホテルにでも泊まったのだろう。


 

後から調べてみると、建物に「ち」の看板を上げているのは、やはりチサンホテルではなくチサンマンションらしい。ちょっと納得。

 

 

 

 

スナック

 

新入社員時代に柳川市内の工場で講習を受けた。昼休みにキャッチボールしていて、工場の窓ガラスを割った記憶がある。
宿泊先は西鉄柳川駅から少し歩いたところにある老舗の旅館。今どうなっているのだろうと探してみるが、真直ぐな道の突き当りにあったその大きな旅館は、駐車場に変わってしまっていて建物は跡形もない。
駅前のスナックには毎晩のように飲みに行った。酔っぱらって帰ると旅館の門は既に閉まっていて、しょうがないので裏の塀を乗り越えて部屋に帰った。

朝起きてみるとズボンがあちこち破れて足が血だらけになっていた。あらためてみると塀の上端には泥棒除けと思われる鋭利なガラス片などが埋め込まれていた。

このときスナックで知り合ったI.Tさんと言う女性とそれから何回か会った。

看護婦さんだったが、今頃どうされているのだろう?


 

 


  
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