立山連峰





 今でも鮮明に心に残っている風景がある。富山から新潟への途上、まだ北陸自動車道が全線つながっていない頃だった。新潟県境に近いある町の小さな整備工場で、修理用部品の到着を待っていた。修理自体は簡単なものだったが、部品が届かないとどうしようもない。

 午後4時頃だったろうか、待ちくたびれて外に出た。ふと見上げると、南側の空半分に雪を頂いた山々が見えた。たぶん立山連峰である。それらの山々が夕日を受けて、見ている間に金色に染まっていく。

 少しずつ濃くなって行く紺色の空をバックに、オレンジ色に輝く峰々の稜線がくっきりと浮かび上がる。こんなに鮮やかな景色を見たのは生まれて初めてだった。部品待ちのイライラも忘れ、しばらくの間見とれていた。 やがて部品が届き、修理を終えたら、もう日はとっぷりと暮れていた。

  
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