ウィキ・リークス

 まだまだ本格的な寒さが続きます。夏が暑かったとしは厳冬、というのはやはり本当のようです。

 さて、この年末から年始にかけて、ジュリアン・アサンジという人の名前がかなりマスコミを賑わせました。今は釈放されていますが、スウェーデン国内で暴行容疑で捕まり、しばらくの間、イギリスで取り調べを受けていました。これがいわゆる「別件逮捕」であり、本当の容疑は「重要国家機密文書の漏洩」であったことは言わば公然の秘密となっています。
彼はWiki Leaks(ウィキリークス)の創始者として全世界に知られています。ウィキリークスとは、(これは「Wikipedia」からの抜粋ですが)

 「匿名により政府、企業、宗教などに関する機密情報を公開するウェブサイトの一つ。投稿者の匿名性を維持し、機密情報から投稿者が特定されないようにする努力がなされている。2006年12月に準備が開始され、それから一年以内に120万を超える機密文書をデータベース化している。」となっています。(ちなみにWikipediaとWiki Leaksは何の関係も無いそうです。)

 元々は、さまざまな国や地域の内部告発文書を誰でも自由に投稿発表出来るサイトとして始められたらしく、設立当初は「アジアやアフリカや中東の独裁政権に対抗する目的」だったと書かれています。これは創始者アサンジの思想的なものが強いのでしょう。

 ところが時が経つにつれて、内部告発者が絶対的に多いせいか、欧米先進国からの投稿による秘密文書やメールが大部分を占めるようになってきました。中でも多いのはアメリカの大使館関係の文書や公電を含む外交機密文書です。約40万件が公開あるいは公開準備中と言われていますが、この中には当然アメリカ政府にとって都合の悪いものも多く含まれていると思われます。先日公開されてセンセーショナルな話題を提供したのは、イラク戦争で民間人と知っていながら攻撃した米軍が攻撃したという証拠を示す動画でした。

 こんなのがどんどん公開されると、アメリカ政府としてはたまったものではないので、欧米の政府は何とかしてこのウィキリークスを潰そうとしています。反捕鯨過激団体のシーシェパードと同じように、賛同者からの寄付によって成り立っているため、そのネットからの送金口座を停止したり、データを一時保存しているサーバーの利用を禁止したりする動きが出ています。

 この問題が難しいのは、彼の行為が違法であるかどうかが明確には決められないという点でしょう。例の尖閣諸島のビデオを投稿した人が処分されたように、公的な組織から機密文書や映像を持ち出すことは犯罪と言える(国家公務員法違反等)のでしょうが、人から送られてきたその資料類をネット上に公開すること自体は、違法とは言えないかも知れません。さらに、ウィキリークスではその投稿者が誰であるのかということをわかりにくくするために色々の工夫がしてあるので、投稿者そのものを割り出して罪に問うことも容易ではないようです。また、それが組織的国家的な犯罪行為を内部告発するものであった場合には尚更です。だから今回のアサンジ逮捕事件も暴行事件に名を借りた別件逮捕であったというのがもっぱらの噂です。ただ、拘束期間中にはその機密漏洩案件での取り調べは進まなかったと見え、一応は拘束を解かれていますね。

 これら一連の事件、よその国の話とばかりも言ってはおられません。アメリカ大使館関連で漏洩した文書の内容では、トルコ、イラクに次いで我が国に関係した文書が3番目に多いと言われています。上に書いたようなさまざまな圧力がかかっているとは言え、ウィキリークスが潰れる様子はありません。また、一度公開されてしまえば二度と取り返すことができないのがネットの怖さ、今後、核持ち込み関係やら、沖縄問題やら、農産物の市場開放問題やら、日本政府にとっても都合の悪い重要文書がぼろぼろ出てくることが考えられます。そのうちに、特ダネは全てウィキリークスから、というような事態になってしまうのかも知れませんね。

かんたんパソコン講座目次

トップ