計算ミス
  
 年が明けて早ひと月、昨年末からの記録的な寒さで「地球温暖化」はどこに行ったのか?と思うような冬が続くのかと思えば、ぽかぽかと割と暖かな日もあったりして、また今年も異常気象であることだけは間違いなさそうです。今月は最近の話題にも関係のある「コンピュータのミス」のお話です。

 「この強度計算はコンピュータが行なっておりますので絶対に間違いはありません。」
 「これは最新のコンピュータが予測したので完全に信頼できます。」

 昔々、コンピュータというものが色んな仕事に少しずつ使われだした頃、よくこんなセリフを聞きました。確かに、人間の計算する速度に比べれば、コンピュータは格段に速くできますし、大元の計算プログラムが間違っていない限り、計算ミスもまずありません。そんなコンピュータの特性に助けられて、スペースシャトルは宇宙を飛べるし、JRなどの便利なチケット予約システムも出来ました。しかし、ここのところ急にコンピュータというものへの信頼が裏切られるような事件が起き始めています。

 昨年末に明らかになったマンションなどの強度偽装問題、立て続けに発生した株式の誤発注問題、いずれもコンピュータを使っていながら、あってはならない「間違い」が起こってしまいました。

 これらの問題に共通して言えるのは(裏で儲けた人間がいるという点も共通していますが)、作為にせよ不作為にせよ「間違え」たのはコンピュータではなく、人間だったということです。冒頭に書いたセリフが何となくおかしいと感じるのは、「コンピュータで(人間が)行なった」のではなく、「コンピュータが行なった」と書かれているところではないでしょうか?

 強度偽装は、建築強度計算用コンピュータソフトの出力結果を、ワープロソフトを使って書き換えたものと聞きますし、株式の数量誤発注は、担当者の単純な入力ミスが原因でした。仕事の内容が人間の頭や力では出来ないくらい、あまりにも複雑化したために、コンピュータの力に頼らざるを得なくなり、とうとうその計算結果をチェックすることも出来ない程になってしまったということでしょうか。

 「いくらコンピュータが発達しても使うのは人間だから間違いの発生は防ぎようがない」とは、ずっと昔から言われ続けてきた言葉ですが、これだけシステムが複雑化し、ましてやそこに人間の悪意が絡むとなると、本当に社会の危機を引き起こすような「間違い」が起こってくるのも無理がないことかも知れません。

 真偽のほどは定かではありませんが、初めて月に行ったアポロ宇宙船は、3台のコンピュータの多数決で計算間違いを防止していたと聞いたことがあります。(ちなみに現在のスペースシャトルは5台で多数決だとか)計算結果が完全にバラバラになった場合はいったいどうするのだろう?という疑問は起きますが、こうすることによって計算ミスや故障の確率は、限りなくゼロに近いくらいになるそうです。

 もちろん、悪意を持った人間が介在する場合はこのようなシステムを使ったとしても不十分で、まったく別の人間が、別のコンピュータを使って検算をして見る必要が生じてきます。ただ、こんな事をしていては時間がかかりすぎて、何のためにコンピュータを使っているのかわからなくなりますし、「人間を介さないことが間違いを無くす最良の方法である」というオートメーションの原則からすれば、無意味なことのようにも思います。

 いずれにしても、好む好まないにかかわらず、現在の私たちの生活はコンピュータの上に成り立っていると言わなければなりません。間違ってもコンピュータの「計算ミス」で殺されるようなことにはなりたくないと思いますが・・・・

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