ライン

エレクトリック・アップライトベース
製作記

  前々から欲しい欲しいと思っていたエレクトリックアップライトベース、
とうとう作ってしまいました。これはその製作記録です。



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使用した工具類のページへ
3D−CAD画像はこちらへ


1.フレットの呪縛
2.アップライトはかっこいい

3.カラザース!
4.買えぬなら......
5.図面
6.材料の入手
7.設計変更
8.3D-Cad モデル
9.ボディから開始
10.いよいよネック
11.フィンガーボード
12.付属部品の入手
13.塗ってしまった!
14.細部の追加工とブリッジ
15.ピックアップ台
16.音は出るのか?

17.ピックアップとポッド
18.本塗装
19.その他細かい部分
20.ネック装着
21.鳴った!
22.音は?
23.まとめ
24.ケースも作りました
25.ピエゾピックアップの追加
26.回路図
27.最近の様子

 

 

フレットの呪縛

 ギターから入った人間にとって、バイオリンとか、チェロとか、コントラバスとか、そういったいわゆる「フレット」の無い楽器への憧れとコンプレックスは多かれ少なかれあるように思います。(もちろん私もその一人)
特に私の場合、その昔、カントリーミュージックのフィドル(バイオリン)に憧れて、バイトの金をはたいて手に入れてはみたものの、結局は弾けずじまいで、それがトラウマのようになって、ずっと心に引っかかっていました。

 今のバンドでもベースをやっているのですが、ある時、友達に借りたフレットレスベースを弾いてみたところ、フレットは無くても、フレット位置を示す線がちゃんとあるので、そこそこは弾けることがわかりました。

 で、調子に乗った私は、練習場所の音楽室に置いてあった古いコントラバスにもチャレンジして見たのです。
「何や。そこそこ弾けるやんか?」これが正直な感想でした。もちろんその時弾いた曲は、バンドのレパートリの中でも一番簡単な「サンフランシスコベイブルース」だったのですが、練習さえすればなんとか弾けるのではないかと思いはじめました。


アップライトはかっこいい

 そんなとき、ちょうど私の住む高槻市の夏祭りのイベントで「ゴンチチ」のコンサートがありました。
彼らのギターはもちろん素晴らしく、プロとアマの差をイヤというほど思い知った夜ではあったのですが、私の目はベースに釘付けになっていました。どこのメーカーの何というベースか、よくはわからなかったのですが、いわゆる「スタッドベース」で、そのウッドっぽい、それでいて張りのある低音と、何と言っても立てて弾くことのかっこよさに思い切り魅せられてしまったのです。


カラザース!

 それからというもの、ベースマガジンを見ては、かっこいいアップライトベースを探すようになりました。
その時私が一番かっこいいと思ったのは、TOKIEさんの持っている「カラザース ( Carruthers )」のベースでした。(Bass Magazineの表紙になっていました。)


それほど凝ったデザインではないにもかかわらず、全身からあふれ出す高級感と洗練された機能美は、他の追随を許さないものがあるように思いました。(弾いている「人」に惚れたという噂もありましたが......
で、「いくらするんかなぁ?」と思ってカタログを見ると、何と54万円!!!
この値段では、とてもとても安サラリーマンのウィークエンドプレーヤが手の届く範囲ではありません。
やっぱりフェンダーのジャズベのちょっと良いものを買ったほうがええかなぁ......
 実は私、ベース弾いてるとは言うものの、基本的にはギタリストだと思っており、そのころベースはヤマハの安物(MB40)しか持っていなかったのでした。

注:ギターはマーチン2台とアイバニーズとモーリスとYamahaSG1000とクラシックギター、Fenderストラト、それからEpiphoneも持ってます。
注2:その後、とうとう嫁さんを説き伏せてFenderAmerican Standard JAZZ Bassを買いました!(トップページ参照)


買えぬなら......

 一度はあきらめかけたアップライトベースでしたが、やっぱりTOKIEさんへの憧れはおさまらず、楽器屋さんに行っては、数少ない在庫のスタッドベースを触っていました。その時ふと気が付いたことは、「ベースはギターより造りが大きい!」ということでした。「造りが大きい」というと聞こえは悪いのですが、特にフレットレスの場合、それほど造りの精度が良くなくても、音程には関係無いのではないか?と思ったのです。
「自分で作れるかも知れない......」私の中の悪魔がささやいたのはその時でした。
子供の2段ベッドや嫁さんの宝石箱、食卓のベンチ、おもちゃの家等、これまで色んなものを作って来たので、頑張れば作れるような気がしました。


図面

 その日から資料集めが始まりました。色んなスタッドベースを触ってはいましたが、メジャーで測れる訳でもなく、正確な大きさはわかりません。それどころか、スケール(弦長)をどれだけにしたら良いのかも皆目わかりません。こんなときにはさすがにインターネット。色々調べて、スケールは1050mmのものが標準的ということがわかりました。各社の色々なアップライトベースの画像をダウンロードして、プリントし、物差しで測るという作業が続きます。
 やっと各部分の大体の大きさが判明し、図面を書き始めたのが2002年の12月でした。
この年の正月はほとんど家にいたので、2晩ほど徹夜して正月休みのうちに一気に書き上げてしまいました。
これがそのときの図面。(フリーソフトの「JW−CAD」使用)



 上の図面がほぼできたのが2003年の1月。ただ、その年の冬はかなり寒かったことと(作業場は屋外のため)、材料調べにもう少し時間がかかったことで、実際に動き出すのは3月になりました。
最終的にはこの形からずいぶん変わってしまうことになるのですが、今あらためて見ると、元のままの方が良かったかも・・とか思ったりして。


材料の入手

 材料は、インターネット上の色んなサイトを参考にして、フィンガーボード=エボニー(黒檀)、ネック=マホガニー、ボディ=スプルース(アメリカ檜)にすることに決定。そんなに珍しい材料でもないと思ったので、お小遣いを握りしめ、まずは行きつけのコーナンへ乗り込みました。

 ところが、コーナンの木材売り場をくまなく歩きましたが、目指す材料はどこにも見当たりません。
黒檀だけは見つかりましたが、小さな工作用の切れ端しかなく、おまけにこれがやたら高いんです。
店員にたずねたところ、「お客さん、そんな材料は普通の日曜大工には使わないので、うちなんかじゃ置いて無いんですよ。どっか材木店にでも行ってもらわないと。」言われてみればその通り。その足で材木屋に向かった私は、ここでもカウンターパンチを食らうことになりました。
「お客さん、うちは建築材だけだよ。」・・・絶句。聞けば黒檀やマホガニーは「家具材」で、「建築」には
使わないため、普通の材木屋には置いて無いらしいのです。
頼めば取り寄せてもらえそうでしたが、「かなり高くなりまっせ」とのことでしたので(めんどくさいんかいな!
商売やろ!)、気の弱い私はスゴスゴと引き下がってしまいました。
 川向こう、枚方の家具団地まで端材を探しに行こうかとも思いましたが、用途を根掘り葉掘り聞かれそうで、その説明にも疲れてしまいそうな気がしてやめました。 

 近所で買えないものはネット通販で!というのがお決まりのパターン。その晩から半徹夜であらゆる検索サイトを探し始めましたが、どうしても目指す素材は見つかりません。普通のエレキベースの自作用素材ならなんぼでもありましたが、アップライト用として使えるような大きな材料はホンマにありません。
やはりアップライトを自作した人はまだいてへんのでしょうか?

(後に追記:この当時はまだこのような材料をネットで販売しているところはほとんど無かったのだったが、現時点2020年ではたくさんある。便利な世の中になったものだ。)

 ネットを巡り歩くうちに、あるギター職人のサイトが目にとまりました。
彼は安い材料で素晴らしく鳴りの良いギターを作るらしいのです。それもアコースティックギターを!
「技術とハートがあれば、安い材料でも素晴らしい音を引き出すことができる」と言う彼の言葉に感動しました。
これに比べれば自分の作ろうとしているのは、ベースで、しかも電気式。代用素材でもそこそこの音は出せるはず!
 上記サイトに勇気づけられた私、翌週、再度コーナンに行って、使えそうな代用木材の物色。
奥の方に立てかけてある材料も全部取り出して、撫でたり叩いたりしている客は、さぞ胡散臭く見えたことでしょう。

ということで購入した材料は、

1.ネック用=アメリカ杉(90x90x1800)
 できるだけ赤くて硬そうで柾目に近いものを選びました。

2.ボディ用=SPF材(38x180x900)
 それにしてもSPFって何の略やろ?と思って後日調べてみたら、
 「S=スプルース(アメリカ檜)、P=パイン(松)、F=ファー(モミの木)を総称した輸入材」とのこと。
 そう思って眺めたら、なんとなくスプルースみたいな気がしてきました。
 ボディ厚最低50mmは欲しかったのですが、無かったため泣く泣く38mmにしました。
 このサイズ店頭在庫約30枚の殆どのものに、部分的な割れや大きな節があって、選び出すのに かなり時間をかけました。小さな節の存在は目をつぶることにしましょう。
 またこれだけ大きな材料になると、「柾目」の入手は困難になります。

3.フィンガーボード用=赤ラワン(20x90x900)一口にラワンと言っても物によりずいぶん違います。これもできるだけ赤くて重くて硬いものを選びました。
 (その後、「ラワン材」は輸入禁止になったとかで、まったく入手できなくなりました。)

4.ナット用=エボニー(黒檀)(8x40x200)この部分くらいは高級材を使ってやろうという、せめてもの親心。

5.駒用=ツゲ(黄楊)(15x120x200)黒檀にできないことは無かったのですが、やはり白いほうが良いだろうということで。
 結局、木材の材料代は全部で7〜8千円程度におさまりました。


設計変更

 ボディ材の厚みが38oのものしか手に入らなかったため、若干の設計変更が必要になってきました。
当初の設計では、カラザースに倣って、エンドロッドは長さ調節可能で内部収納式の予定でしたが、38oの厚みでは、ロッドを収納するだけの内部空間が取れそうにありません。
やむなく取外し式とし、長さについても、どうせ弾くのは自分だけ、自分に合わせれば良いということで非調節式にすることにしました。
 また、ボリュームとトーンの位置も、ポッドを横に埋め込むスペースが無く、当初の側面配置から正面配置に変更しました。どうもこのほうが使いやすそうな気がします。

 エンドロッドの内部収納をあきらめたことで、弦の取付け方法は「表面ブリッジ方式」から「憧れの裏通し方式」にすることが可能となります。これにより、ボディ側ブリッジは、当初は鉄板で作ろうと思っていたのですが、加工の容易な木材にすることができました。
こっちのほうがよりクラシカルな雰囲気が出せそうです。



ボディから開始

 2003年4月、ようやく削り出し作業を開始。ネックは難しそう(ネックがネック?寒!)だったので、ボディから始めることにしました。
鉛筆と金尺で表面に線を引いてから、鋸で切っていきます。カーブ部は、多角形に切った後、カンナとヤスリで角を落としていきました。電動の糸鋸盤があれば、ほんの5分でできる作業なのですが、すべて手作業、材料を固定する作業台も無いといった状況では丸1日がかりとなってしまいました。
「無謀なことを始めてしまったのでは?」という考えが一瞬頭をよぎりましたが、材料を買い込んでしまった以上、もう後には引けません。数年前に作った子供の2段ベッドよりは楽なはず、と自分に言い聞かせながら、ひたすら鋸を引きました。
(実はベッドより数倍大変だったのですが。)

 ここで木取りについてのアイデアを少し。
ボディ材は「柾目」が手に入らず「木目」(表から見て年輪が輪になって見える)で作ることになりましたが、「木目」材はよほど寝かせた材料で無い限り、時間経過で必ず多少の「反り」が発生します。
今回、ボディの見場が悪くならないよう、木の表皮側を表にしました。
(こうすれば、反った場合でもボディの表側が膨らむ方向に反ってくれるはずです。)

 さてなんとか粗削りは終わりましたが、ボディのシェイプがどうも気にいらないのです。
憧れのカラザースは、何の変哲もないほぼ四角形。オリジナリティを持たせようと、下側は丸く、上側はテーパ状にしたのですが、どうもこれが安っぽく見える元凶のような気がしてきました。
で、方針変更。ボディ中央部に「くびれ」を追加して、ヴァイオリン形状にすることにし、天板の肩にあたる部分には大きな面取りをつけました。うん、まあこれでいいか。

  

ここでやっと、作業を写真に残しておこうと思い立ち、デジカメで取ったのがこの写真。
もっと最初から撮っておけばよかった・・・。

こんな訳で現物の形状変更が先行してしまいました(モノ作りではよくあるハナシ)が、やっぱりこの辺りで図面も直しておかねば、と思って、形を変えた部分を書きなおしておきました。
下の図面は設計変更後、ほとんど最終形のものです。
この時には、体に当てるためのアームを取り外し式で付けるつもりでした。



Cadデータまたは図面画像が必要な方はメールを頂ければお送りします。
  (メールはTOPページからお願いします。)


3D-Cad モデル

(大まかな意匠設計には、一部3D−CAD(Soid Edge)も使いました。)
以下、CADモデルです。(実を言うと現物が先行した部分も多く、詳細は後から書き込みました。)
   
 
 


 ここまでやったところで、本業のほうの出張や家事などが重なり、ひと月近く作業を中断しました。
この間、作りかけのボディは2階の廊下に立てかけておいたのですが、作業再開時によく見てみると、案の定「反り」が出ています。
予想通り、ボディの表側が2mmほど膨らんでいました。この程度のふくらみなら全然問題ありません。
ネック取付け部の溝は、鋸とノミ、カンナ、ヤスリを駆使します。
もし、ここに隙間ができたりするとネックの精度が出ないばかりでなく、音も悪くなるらしいので、あくまで慎重に加工します。


(ボディのネック取付用溝:写真は仮塗装後のもの))

 ポッド、ジャックの取付け用穴や、配線用の溝も、本来この時点で加工すべきでしたが、まだ電気関係部品は一切入手できておらず、必要な穴の大きさが決められないため、後回しとせざるを得ませんでした。


いよいよネック

 次はいよいよネックの番。こう書くと、続けて作業をしているように見えますが、そこは悲しいサラリーマンの身、1週間に1日か2日しか作業はできません。9x9x180cmの角材を前に、どこから手をつけようか、しばらく思案しましたが、とりあえずは長さを合わせて切らないと始まりません。
図面の長さに7〜8cmの余裕を持たせてカット。
この長さの余裕が、あとで思わぬ効果を生むことになります。

 これからの加工については、言葉よりも画像のほうがわかりやすいと思いますので詳しい説明は省きますが、側面、平面、細部形状の順で鋸を入れていきました。マホガニーなどと比べれば、ずいぶんやわらかい木のはずですが、やはりこれだけの作業を手だけでやるのはなかなか大変でした。(この作業のおかげで腕力がついた気がします。)

  
 (ネックの加工:側面)


 (ネックの加工:平面)

 鋸による粗い木取りが終わったら、ヤスリとカンナで細部を仕上げて行きます。カンナはシュッシュッという軽い音ですが、ヤスリの場合、ギーギーガーガーとかなり大きな音が出るため、近所からの苦情が心配でした。
幸い、日頃の行いが良いせいか、どこからも文句は出なかったようです。

  
 (ネックの加工:ヘッド部)

 ネックの構造で、ずっと迷っていたのは「トラスロッドを入れるかどうか?」です。
ご存知のように、エレキベースのような細いネックには、弦の張力による曲がりを防ぎ、また曲がった場合でも修正が可能なように、全てトラスロッドと呼ばれる金属製の棒(ボルト)が入っています。
わがベースはボルトオンネックとする予定なので、どちらかと言えば構造はエレキベースに近いのです。
ただ、ロッドを入れるためには、ネックの全長にわたって、細くて深い溝を加工しなければならず、手持ちのノミでやるのは容易なことではありません。
考えた挙句、今回トラスロッドは入れず、その代わり、変形に対する強度を確保するため、ネックの厚さを少し(設計図より10mmプラス)厚くすることに決めました。

 さて、ネックを削っているうちに、形が少し物足りなくなってきました。
最初の設計では、ヘッド部分の形状は、カラザースのようにシンプルな四角形のままのつもりでしたが、どうもヴァイオリン形にしたボディとは合わないような気がします。幸い、ネック用素材の長さは充分な余裕を取って
いたので、ヘッドの先をコントラバスのようにクルッとまるめた形状に変えることにしました。

  
 (ネックの加工:ヤスリとカンナで削っていく)

 今回の工作でいちばん大変だったのが、実はこのヘッド形状でした。ノミと彫刻刀で彫り込んでいったのですが、ベランダでの蚊に刺されながらの作業は、なかなか思うように進まず、彫り終わった頃にはもう8月になっていました。
この辺り、もう少しこまめに写真を撮っとけば良かったのですが、作る事に必死だったため、かなりの空白期間があります。ヘッド部の「中ぐり」やペグ取付穴の加工写真も撮り忘れています。

フィンガーボード

 次はフィンガーボード(指板)です。今回のようなフレットレスの場合、やはりここが命のような気がします。
四角の素材の両側をテーパ上に落とし、カンナとヤスリでアールをつけてきます。弓弾きはしないつもりなので、コントラバスほど小さなアールにする必要はありません。この作業は1日で完了。
最終の仕上げは、ネックへの接着後にサンドペーパで行うことになります。

  
 (フィンガーボードの加工:長方形→台形→R付け)

 この、表面仕上げが最後でもできるのが木工の良いところ、早めにネックとフィンガーボードの接着を済ませておくことにします。
プロは「ニカワ」(接着後でも熱を加えればはがせるため、リペアが楽との事)を使うらしいのですが、まあ普通の木工ボンドでも良かろうということにしました。今まで作ってきたものは全部これを使ってきたことですし。

 ということで、ネックとフィンガーボードの合わせ面をサンドペーパでキレイにし、薄くボンドを塗って貼り付けます。
あとはバイス(シャコ万)などで挟んでおきたいところですが、バイスを持っていないので、自転車のゴムをグルグル巻きにして代用しました。(下の写真)
重しになっているのは、練習用のFenderアンプであります。完成前から相性を良くしておこうと......


 (フィンガーボードとネックの接着)

付属部品の入手

 これら作業に並行して、付属部品の手配にかかりました。新品の部品はあまりにも高価だったので、すべてインターネットオークションでの入手となりました。

<入手したパーツ>

@ 弦:これはウッドベース用の新品(ただし中国製)EAGD4本セットで3800円
A ペグ:中古品(ジャズベ用)4個で1000円
B ピックアップ:中古品(ヤマハ製2分割型)1500円
 (弦の配置はエレキベースと異なり、アールがつくため、どうしても分割型が必要)
C ジャック:これは、ずっと昔自作したミキサーから取り外して使用 0円
D ボリュームポッド:新品6個で1500円(4個しか使わないが6個単位で購入)

以上計7800円(送料も入れると約10000円)

 予想よりかなり安くあがったので嬉しかったです。特に弦はエレクトリックアップライトベース専用だと最低でも18000円、コントラバス用に至っては、平気で1本1万円とかするので、オークションで見つけるまでは、どうしようかと思っていたところです。


塗ってしまった!

 ずっと迷っていたのは塗装色と塗料の種類です。いろいろ考えましたが、やはりカラザースに倣って、ボディはメープル、ネックはマホガニー、フィンガーボードはエボニーとすることにしました。

 <買った塗料>使用した工具類 参照

@ メープル色水性ニス(ボディ用)
A マホガニー色油性オイルステイン(ネック用)
B ウォルナット色油性ニス(フィンガーボード用)
C 黒色ラッカースプレー(フィンガーボード用)
D クリヤラッカースプレー(全体上塗り用)

 エボニーに近い濃い色のニスが手に入らなかったため、BとCを混合して塗ることにしました。
以前にも塗装で大後悔をしたことがあります。特に木目を活かすためのニス系の着色塗装は、想像したのとまったく違う色になることが多く、試し塗りが不可欠です。
ボディとネックの隠れる部分(合わせ面)に、買ってきた塗料を塗って見たところ、まあそこそこの色が出ました。
これでやめておけば良かったのですが、たまたまその日の天気が良く、塗装の乾きも早かったこともあり、ついつい全体の色調が見たくなって、ネック全体とボディ表面の全塗装をやってしまったのです。
ネックはまだ良かったのですが、ボディ裏面にはまだ加工しなければならない部分(電気関係パーツ取付け穴)がいっぱい残っていました。
これはちょっとあせり過ぎました。
裏面の加工時、どうしても塗装面に傷がつくので、塗装は全ての加工が済んでから行うのが基本です。反省。

  
 (色確認の試し塗装部分)              (下塗り後)


細部の追加工とブリッジ

 先延ばしにしていたボディ裏側の穴加工に入ります。ノミと彫刻刀での作業ですが、ボディトップの下塗りを
してしまっているため、傷をつけないように、かなり気を使いながらの作業となりました。
ボリュームポッドとジャックの取付け部は電動ドリルで穴をあけます。

  
 (ボディ裏面:弦の取付部とプラグ部の穴ぐり)  (同:ボリューム&トーンポッド取付部)

 次は下側のブリッジ。ブリッジと呼ぶべきなのか定かではありませんが、ボディ厚み不足の強度をカバーするため、かなり大きめのブリッジにしました。材料はネック用素材の余りを使用。これは殆んどカンナを使って丸くし、ヤスリとサンドペーパで仕上げました。

  
 (ブリッジ素材)              (カンナとヤスリで加工→塗装→接着→穴あけ)

 これもマホガニー色を塗装後、ボディに接着。尚、弦通し用の穴あけはボディとの接着後に行います。
ここまで来ると段々先が見えてきて、何とか完成できそうな気がしてきました。


ピックアップ台

 ピックアップ取付け台の製作には意外に手間取りました。この材料もネックの端材を使って、外形はすぐに出来ましたが、ピックアップにぴったりの穴を掘るのがなかなかです。
最初はノミを使いましたが、穴の底を平らにするのが難しく、途中からは全て彫刻刀での作業となりました。
これも塗装してからボディに接着、充分固まってからピックアップの配線を通す穴をあけました。

   
 (ピックアップ台の素材)         (カンナとヤスリ、ノミ、彫刻刀で加工→塗装→接着→穴あけ)


 ここまで出来たところで、ちょっとくっつけて見たのが下の写真。ネックはまだはめ込んでいるだけですが、わりと精度良く合っています。
女房曰く「えーっ!こんなに大きかったん!!いったいどこに置くのよ!!」 また怒られました・・・。


 (仮組み状態、フィンガーボードは調整のため表面を少し削ったため白くなっています)


 いよいよ弦を取付けるためのナットと駒の製作にかかります。ナットにはエボニー(黒檀)を使うことにしましたが、さすがに黒檀、この硬さには泣かされました。弦を嵌めるための溝はあとで加工することにして、ネックとヘッドの境に彫刻等で浅い溝を掘って、削りだした半月状のナットを接着しました。


 (黒檀製ナット装着状態、溝はこの後で加工)


 駒はシンプルな形状にしたので、割りと簡単でした。音楽室にあったコントラバスの駒には、滅法手の込んだ細工がしてありましたが、そこまでやることもないだろうと思って、一応お愛想で、飾り穴を5つあけておきました。

  
 (駒の素材、板取状態)               (ヤスリで先端を細く削っていく)



 (ドリルで飾り穴あけ)


音は出るのか?

 弦を入手して以来、少し気になっていたのは、購入した弦は純粋なウッドベース(コントラバス)用だったということです。
フラットワウンドはいいとしても、この弦、エレキベース用のピックアップで本当に音が拾えるのでしょうか?
カラザースなどは、ブリッジの下にピエゾ式のピックアップが仕込んであって、マグネチックでは無いようですが、そんなピックアップは手に入りそうにないし、もし買えたとしてもメチャ高いに違いありません。
完成してからアンプにつないで見て、全然鳴らなかったりしたら、家中の笑いもの、お父さんの権威失墜は目に見えています。(もうすでに落ちるところまで落ちているという説もあるが)
これはやはり確認して見るしかないので、持っているYAMAHAエレキベースのピックアップのところに、購入した弦をあてがって、指で弾いてみたところ、一応ボコボコと音は出ました。この音で、まあ多分大丈夫だろうということにしました。


ピックアップとポッド

 ピックアップは長めのビスを使って固定。ウレタンフォームをつぶしてしまわないよう、締めすぎに注意します。
ボリュームポッド取付けも少々苦労した部分のひとつでした。ネットオークションで購入したボリュームは取付けネジ部が短く、板をかなり薄く(3〜4mm)しないと表からのナットが締まりません。
あまり薄くすると、ボリュームツマミを何かに当てた時に、板が割れる恐れがあります。
実は以前、SG1000のボディをそれで傷物にしてしまったことがあるのです。
この予防策として、ボディの表側からも板を削り、薄くするのは穴の縁だけにすることにしました。
彫刻刀がだんだん切れなくなってきており、穴の周辺がササクレ状に汚くなってしまいましたが、
まあこれだけ使えば無理もありません。穴のササクレは、塗装をしてツマミを取り付ければ目立たなくなりそうです。
ちなみにツマミは、昔使っていたビクターの名アンプJA−S8に付いていたものです。

  
(ピックアップ取付)                  (ボリューム、トーンコントロール部分)


本塗装

 ここまで来たらいよいよ本塗装です。今回はオイルステインの部分も多いため、全部ハケ塗りとしました。
仮付けしていたパーツ類はすべて取り外し、前に早まって塗ってしまったところも含め、再度慎重に上塗りをします。
ボディに使った水性塗料はムラになりにくいので、ハケ塗りが簡単です。
逆にフィンガーボードは油性ニスのため、乾くとかなり凸凹になりましたが、ここは後にサンドペーパで仕上げるところなので気にしません。ネック部は、塗った後、何日もかけて磨いてツヤを出しました。
クリヤラッカーは一番最後にしっかり塗っておきます。多少の凸凹はカバーしてくれるのが、
クリヤラッカーの良いところ。


 (ネック本塗装後)


その他細かい部分

 あまり長くなるので簡単に済ませますが、まだまだ作るものはたくさんあります。
ポッド部、ジャック部の裏面のフタは、厚さ1mmの黒色塩ビ板を使用しました。塩ビだと大きめのハサミで切れるので楽なためです。外周は細かい目のヤスリで仕上げます。


 (ポッド部裏蓋)


 ボディ裏から弦を通す部分の補強は、エボニー板の残りで作りました。
エンドロッド取付け部は、買ってきた1mm厚の真鍮板を直角に曲げてビス止めし、ボディと一緒に深さ5cmくらいの穴をあけてから、市販のパイプ支え(ダイカスト製)を装着しました。

  
 (弦通し部分、中央の銅線はノイズ消し用アース)   (エンドロッド固定部分) 


 ここに差し込むエンドロッドは、直径13.8mmのステンレス製のパイプを金鋸でカットし、端部には
ゴム製のキャップをはめ込みます。


 (エンドロッド)


 ジャックからボリュームまでの配線用溝のフタは、ボディの補強を兼ねてかなり厚めの木から削りだしました。
この材料は、もともと子供のベッドの足になっていたものなのです。やっぱり何でも置いといてみるものですね。

  
 (補強兼用裏蓋)


 ボリュームとジャックを取付け、配線と半田付けをおこないます。


 (プラグ部の配線)


 配線方法もインターネットサイト(米国でベースを自作している人)のお世話になりました。
トーン用のコンデンサ(キャパシタ)は手持ちが無かったので、三宮の石橋楽器まで買いに行きましたが、物の値段(たしか200円)より電車代のほうがだいぶ高くついてしまいました。
 楽器店に行ったついでに、各メーカーのエレクトリックアップライトベースをもう一度じっくり観察しました。
やはりさすがにプロの仕事、細かいところの仕上げは、到底素人には真似できそうにありません。
「いい仕事してますねぇ」ってやつです。まあ、こっちはどうせ作るほうのプロではないのですから・・・


ネック装着

さあ、いよいよネックの取付けです。あらかじめドリルで下穴をあけておき、ビスでしっかり固定します。
どのくらいの強度が必要なものか、皆目わからないので、100mmという広いピッチで6本止めとしました。
かなり余裕のある強さだと思います。
ネジ(普通のサラネジを使用)の頭が出っぱらないよう、サラ形状に合った座金を使用しました。

  
 (ネックの取付)


 (取付後)


鳴った!

 とうとう弦を張るときが来ました。

   
 (弦を裏から通す)                 (ペグに巻いて行く)


 (駒部分)


 ギターの弦を張り替えるときもそうですが、今回はまったくの未経験ゾーン、かなり緊張しながら少しずつペグを巻き上げていきました。途中で少し弾いてみると、ボディが大きいせいか、
生でも割と大きい音が出るようです。
チューニングが終わるまで待ちきれなくて、シールドを差込み、アンプにつないでみました。
鳴りました!それも、かなり太い音がするではありませんか!
いやあ、ホントに安心しました。

 チューニングを済ませてから、少しだけ「サンフランシスコベイブルース」などを弾いて見たら、やはりネックが太いのが少し気になります。
この太さでは、細かいフィンガーワークはかなり指に負担がかかりそうな気がします。
ネックに追加工をしようかとも思いましたが、塗装をしてしまっていることと、弾き込んでいけば、
この太さにも慣れるかも知れないと思い、そのままにしてあります。(実際、だいぶ慣れてきました)

(後に追記:何年も経ってから、やっぱりちょっと太すぎると感じてきたので、約10mm薄くしました。)


 こうして、やっと音が出せたのは、図面を引き出してから約9ヶ月後の9月20日、そろそろ秋風が立ち始めようとしている頃でした。
早速、翌週のセッションに持って行ったところ、バンド仲間には作っていることを秘密にしていましたので、かなりの反響でした。大満足!


音は?

 さて、気になる音ですが、愛用のBassman100(私の持ち物ではありませんが)で鳴らした時の音は、なかなかのものであります。
ピックアップは安物ですが、1050mmという圧倒的なロングスケールが太さを生んでくれるのでしょう。
それでいて、ウッドベース特有のまろやかさもあります。
まだハイポジションでの演奏は厳しいのですが、そのうち何とかなるんじゃないかな?と思っています。

 その後、ポジションマーク(真鍮釘)を打ったり、フィンガーボードの上塗り塗装を追加したりしながら現在に至っています。
今後、もう少し音のバリエーションを増やすために、駒の部分に取り付けるマイク(ピエゾ?)を吟味中(そのためにボリュームとトーンは2個づつ付けておきました)ですが、信じられないくらい高価であるため、当分は買えそうにありません。
それともまた何か代用品を探すことになるでしょうか?

そうそう、忘れていました。設計図には、ボディを自分の身体にしっかり固定するためのアームを付けて
います。部品としては作りかけてはいるのですが、今のところまだ装着していません。なんか無くても
行けそうなので。

最近、ちょっと愛機を飾ってみようと思って、ピックアップの横に金色のエンブレムを付けました。
かっこいいマイブランドでも考えれば良かったのですが、ただのイニシアルです。(笑)




まとめ

 普通、素人が初めて弦楽器を作る場合、ウクレレ程度から入るのが妥当な線のようです。
今回、いきなりアップライトエレクトリックベースを作るという、かなり無謀なことをやったわけですが、正直言って大変でした。
どうにかこうにか作り上げることができましたが、自分でもよく出来たと思っています。
これはやはりインターネットの効用が大きいと言えるでしょう。
LINK」のページに、参考にさせていただいたサイトにリンクさせていただいてますので、
興味のある方はぜひアクセスしてみてください。


   

側面    (愛用のYAMAHA MB−40と大きさ比較)  裏面

ケースも作ってみました



最近?作り始めたケースの途中経過です。材料は普通のベニヤ板・・・       ケース完成!


ピエゾピックアップの追加

やっとピエゾを手に入れて、なんとか両方鳴るようにしました。さすがにプリアンプ無しではピエゾのみの出力ではどうにもパワー不足ですが、マグネチックと併用して、その中にちょっとピエゾっぽい味付けを出せるくらいにはなっています。



以下、回路図です。
結局2ボリューム2トーンはあきらめて、単独ボリュームX2 トーンX1 マスターボリュームX1 という構成になりました。(メインボリュームツマミは大きいものに変更)
詳しい方から見れば、変な回路なのかも知れませんが、まあ鳴ったので良しとします。


回路図






最近の様子

最近またこのベースを使うことが多くなりました。
というのは、いちばんお気に入りの第2作は行きつけのライブハウスに置きっぱなしになってしまい、自分の部屋でアップライトを練習するためにはこいつを使わざるを得ず、それならもっと弾きやすくしようと色々改造するうちに、またこれがお気に入りになりました。

今回の改造部は、

@つまみは全て同じ大きさに。
Aネックを約10mm薄く。
Bヘッドの渦巻きはカット。
C駒の高さを調節式に。
D胸当て追加。

 

などでしょうか。

木製, 切る, テーブル, 板 が含まれている画像

自動的に生成された説明

ギター, 荷物 が含まれている画像

自動的に生成された説明


屋内, コンピュータ, テーブル, 座る が含まれている画像

自動的に生成された説明

 

その後、塗装のやり直し(ニスを剥がしてオイルステインのみに)をしました。
ちょっと高級感が出ました。

 



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