7.ニワトリと卵(パーツとアセンブリ)続き
前項の内容を踏まえて、3D設計の大きな流れとして以下のようなものを推奨したい。
@ 手描きで良いので、製品全体の大まかなポンチ絵を描く。前提条件として要求仕様が明確に決まっていることが必要であるが、ごく稀にはこれを描きながら仕様が固まっていく場合もある。グループでの仕事の時には全員が集まってワイガヤをしながら模造紙などの大きな紙に描いていくのが良い。スクリーンに映しながらパソコンに描いていくということも可能だが、検討過程が消えずに残るという点で、やはり紙が良いと思う。
A 機能(あるいは部位)ごとのサブアセンブリのポンチ絵も作っておく。できればアイソメ図のように立体的に描くのが良い。この時に、それぞれのパーツやアセンブリの「基準(原点)」を決めておく。この点(x,y,z=0,0,0)が上位アセンブリに組付けられる際の基準となる。尚、基準は後から変更できる。
B これらの絵をもとに、それぞれのサブアセンブリやパーツの親子関係を表した「ツリー」を作る。(「系統図」や「樹形図」と呼ばれることもある。)
3Dデータは親子関係含めてこのツリーに基づいて作成されることになる。
C ツリーには、そのアセンブリやパーツの名前まで仮決めして書いておくのが良い。名前の付け方で迷うのは時間の無駄なので、通し番号を使っておくのが効率的。それをそのままモデル名としても可。(最初から正式な部品番号をモデル名にしておくべきかどうかについては諸説あり。)
D 各パーツの設計がまったくできていない状態であっても(新規設計の時はその場合がほとんど)、上記モデル名のファイルを作り、パーツ、アセンブリともにそれぞれの名前で保存しておく。空のままでそれぞれのアセンブリにパーツをアセンブルしておく。まったく空のまま(座標系のみ)ではどうしてもわかりにくければ、例えば2〜3フューチャだけのごく簡単なデータを作っておくだけで可。これを「スケルトン」と呼んでも良いかもしれない。
E 各パーツやアセンブリを作る「向き(上下左右方向)」は、できれば全体組立時の向きに合わせて作っておくのが良い。アセンブリ作業が容易になり間違いも少なくなる。
F この時点でほぼ同時にすべてのパーツやアセンブリの「図面」も作っておく。少しずつ出来上がってくるそれぞれの立体の「寸法」や「隙間」の確認には図面のほうが便利なこともあるので。もちろんこの図面もLOD(下図参照)が上がるとともに同時に成長し、3Dモデルが出来上がったときには図面も(寸法や公差の追記は当然必要なので、少なくとも線画としては)完成していることになる。
G アセンブルは、最初の時点ではすべて「原点合わせ」でも良い。設計が進むにつれてそれぞれのパーツやサブアセンブリが適切な位置に配置されてくる。それを確認するのも管理者の仕事である。
H パーツ間の相互依存配置(面合わせなど)は使わないほうが良い場合がある。使用するCADソフトウェアによっては、相手部品の設計変更によりエラーが発生することがある。
I 既製品(現行品)を何も変えずにそのまま使うパーツは、そのままでアセンブリしておくのが普通であるが、一部変更して使う予定のものについても、元になるパーツの名前を変えて保存しておいてそのままアセンブリしておく手もある。