6.ニワトリと卵(パーツとアセンブリ)
注)パーツ(parts)はパート(part)の複数形なので、CADの領域では「一つの」部品はパーツではなくパートと呼ぶことが多いが、ここではあえて区別しない。
3D設計において、パーツが先かアセンブリが先か、が議論になることがある。それぞれ「ボトムアップ方式」「トップダウン方式」と呼ばれることもある。不毛な議論である。先にパーツが出来上がっていて、それを組み上げるだけの作業は「設計」や「開発」とは呼べないのではないだろうか? (それが設計というものだと思っている人もいる。)
まったく新しい製品や機構を設計するときには、ほとんどのパーツを新しく作ることになるが、ごく限られた簡単なモノ以外はパーツ単体で詳細設計を進めることは不可能で、全体としての要求仕様を満足させるように、ほかのパーツとの整合性を取りながらそれぞれのパーツの設計を進めていくことになる。比較的部品点数が多い製品になれば、その作業を複数の設計者で同時に行うことも多い。ツリー状につながった親子関係のあるファイルを多人数で共有しながら設計が進められるというのが普通である。
自分も含めて昔の設計者、特に2D-CADも無かったころから設計をやっていた人たちは、俗に「ポンチ絵」と呼ばれる手描きフリーハンドの絵を描きながら構想(レイアウト)設計をすることが多かった。このポンチ絵は2面図や3面図ではなくアイソメ図のように立体的に描かれることも多かったので、自然に立体的な感覚も養われた。
これに対して、2D-CADから設計を始めた人たちは、あまり手描きのポンチ絵というものを描かなく(描けなく?)なったように思う。手描きに比べて、描いたり消したりが抵抗なく行えるようになったことで、そのような構想図そのものを2D-CADで描くのが比較的簡単になったし、以前の図面データを持ってきて、必要な部分を伸ばしたり縮めたりして名前を変えて保存、みたいな設計が増えてきたからかもしれない。
3D-CADになって、この状況はまた少し変わってきた気がしている。新しいものを設計する際に、いきなり3D-CADで構想図を描き始めるのは少し難しい。そのような理由から、また昔のような「ポンチ絵」が必要になってきているのではないだろうかと思う。フリーハンドで描くポンチ絵のような感覚で使える3Dツールがあれば良いのだろうが、まだなかなかそのように便利なものにはお目にかかれていない。