３．アソシエティビティの罠　

前書きのところに少し書きましたが、Pro/Eの導入時に混乱を極めた原因は、このソフトが持っている「アソシエティビティ」（双方向連携）機能、「パラメトリック」（変数設計）機能、それに「リレーション」（相互関係）機能でした。簡単に言うと、「どれか部品の形状や寸法を変更すると、それに関係する部品やアセンブリもすべて自動的に変わる」というものです。導入教育を受け持っていただいたコンサルの操作指導も、まさにこの点を主眼に置いたものだったのです。

どこかの会社では携帯電話の設計のためにこの機能を駆使していて、そのおかげで設計に要する期間が以前の3分の1になった、というのがその触れ込みでした。初めて3D設計を学ぶ我々設計者は、その言葉を完全に信じ、操作講習が終了した者から順次、教えられたそのままの手法で設計を進めていきました。

上記の機能を使うためには、何か新しい部品を作る際に、既に存在する他の部品の形状や寸法と関連付ける（「参照」とも言います）作業が必要となります。我々が使っていたPro/Eにおいては、スケッチの作成時にこの「関連付け（参照、外部参照）」が勝手に作られるような設定となっていました。

結果、どんなことが起きたか？　思い出すのも嫌なことではありますが・・・

複数の設計者で同時進行している比較的大きなプロジェクト、自分が担当してモデリングをしているパーツ形状に加工が難しいところがあることに気がつき、少し形状を変更して上書き保存したとします。翌朝、チームの他の誰かから悲鳴が上がります。彼の担当している部分に突然エラーが出て、モデルが再生できなくなったというのです。原因を探っていくと、どうも自分が前日に変更したパーツのせいらしい・・。知らないうちに自分のパーツと関連付けされていた他のパーツ上に、寸法変更による形状矛盾が生じ、そのためにそのパーツばかりでなくアセンブリまで再生できなくなってしまったらしいのです。